こんな建物、あんな建物一覧表

(4)御殿

御殿とは、領地を治める政務空間、領主(城主又は藩主とも)やその家族の生活空間、領主達の生活を支える台所や使用人空間、そしてお城内の風靡を醸し出し領主の休息や来客対応を行う空間で構成されます。

 

・御殿がお城の中に現存しているのは、国宝では、二条城の二の丸御殿、重要文化財では、掛川城の二の丸御殿、高知城の本丸御殿です。また、川越城の本丸御殿も一部ですが現存しています。また陣屋の中で現存しているのは、柏原陣屋の陣屋御殿、名張陣屋の陣屋御殿などがありますがこれらも一部です。

 

・最近は、御殿の本格的な復元を木造で行われています。佐賀城の本丸御殿、熊本城の本丸御殿はすでに復元されており、名古屋城の本丸御殿は平成30年の全面完成に向けて現在第二期復元が完了しています。彦根城の二の丸御殿は外観復元されて、内部は博物館となっています。

 

・御殿を構成する建物は多種類あり、玄関、控の間、大広間、来客者との対面の間、来客者のもてなしの間、政務の間、領主(城主又は藩主とも)の私的の間や憩いの間、後継ぎや隠居者などの家族用の間、台所やその廻りの部屋、侍従の生活の部屋などがありした。

 

・また、曲輪毎に、政務用や生活空間用、後継ぎや隠居者などの家族用、或いは危機事案(火事など)発生した時の予備用として、別棟で建てられる場合が多かったようです。お城内以外にも、領主(城主又は藩主とも)やその家族の休息、憩いの場所、来客用として庭園とともに建てられることもありました。

 

・江戸時代には、将軍或いはその家族用の住まいの他に、将軍が鷹狩りに出かけた際の休息用として御成用の御殿が造られたり、日光東照宮参拝時の宿泊用、京へ上る際の宿泊用としても造られたりしました。

 

・御殿も門と同様に、特に廃城後には分割移築されて、各所で再利用されているケースが多いです。特に、伏見城御殿の移築は、移築伝説も含めて非常に多く、これについては後段「お城の建物こんな所で見つけた!」で紹介したいと思ます。

 

・城が発達してきた過程から歴史的な話を少し織り込みますと、戦国時代より前の城とは、城主が居住する建物を周辺に堀を巡らし敵から防衛するような構成であり、その城主の生活の場が「居館」と言われるものだったようですが、その「居館」が発展したものが安土桃山時代には御殿となり、天守閣と並び城主の生活空間となったようですので、御殿は城の中でも最も古い「城を構成する建物」であったと思われます。

  御殿の種類

            細別と名前           内     容
 (4)御殿  

 ①玄関廻り

 ア)車寄せ イ)玄関の間 ウ)式台の間  エ)老中の間 オ)御用人部屋   カ)遠侍の間 キ)対面所又は対面の間  ク)御談の間

 

・御殿の正式な出入口、来客者の待合や幕府・藩関係者の控えの場所、来客者との対面の場所であったりします。お城により、様々な呼び方がされていたようです

 

 ②将軍や領主(城主又は藩主)が政策発信する場所

 ア)大広間  イ)広間

  

・上段之間、中段之間、下段之間 或いは 一之間、二之間、三之間 と部屋が分かれる場合があります。

・上段之間或いは一之間には、付書院、床の間、帳台構が設けられました。

・部屋の襖に描かれた絵柄が部屋の名前に付けられる場合もあります。

 虎之間、梅之間、松之間

 ③将軍や領主(城主又は藩主)が政務用として、大名、幕府要人、家老など藩関係者と対面した場所

 ア)黒書院  イ)表書院  ウ)表御殿  エ)大書院  オ)正殿

・お城により、様々な呼び方がされていたようです。

④将軍や領主(城主又は藩主)が私的生活や休息した場所

 ア)黒書院  イ)黒木書院  ウ)湯殿書院  オ)中奥  カ)奥御殿  キ)小書院  ク)御座   ケ)御小座敷

・お城により、様々な呼び方がされていたようです。

⑤将軍や領主(城主又は藩主)の寝所、その御台所や奥方、側室が生活する場所

 ア)御小御所  イ)新御所   ウ)御対面所 エ)御仏間

 ・お城により、様々な呼び方がされていたようです。

⑥将軍や領主(城主又は藩主)その家族を支える侍従や役人の控えや生活の場所

 ア)長局    イ)御広敷

 ・大奥で奥方や側室を支える女性達の住居部分が長局です。男性禁止のエリアでありながら、大奥の庶務事項を司る男性役人が詰めた場所が御広敷です。

⑦遊興や憩いの場所

 ア)能舞台  イ)御亭(おちん) ウ)茶室  エ)御茶所  オ)栖鳳楼

・遊興の為の様々な施設が併設されていました。現在は、それらが各所へ移築されて再利用されているケースが多いです。

⑧御殿内の食事を賄う場所

 ア)御台所   イ)御清所    ウ)上台所 エ)上膳立所  オ)賄方

 

⑨その他納戸、物入れ

 ア)御文書   イ)御文証

 

現存の御殿

           二条城二の丸御殿(国宝)

          川越城本丸御殿(現存)

         高知城本丸御殿(重文)

 掛川城二の丸御殿(重文)静岡県掛川市

※御殿の全景、外観は漆喰真壁造、下見板張。

※御殿玄関で屋根は起(むくり)屋根。

※手前は大書院の次の間で謁見者が控える部屋、奥は大書院の藩主との対面室。

※広間から大書院の三の間、次の間方向


 柏原陣屋表御殿(現存)兵庫県丹波市

※御殿玄関

 

※御殿玄関と式台に続く書院

※書院上ノ間

※書院次ノ間



復元の御殿

         名古屋城本丸御殿(復元、第三期工事中)

           佐賀城本丸御殿(復元)

           熊本城本丸御殿(復元、現在地震で修築中)

 彦根城二の丸御殿(復元、一部移築復元)

※表御殿玄関(復元)

 


※高御廊下(復元)

※表御殿大広間(復元)

 


※御座之間のお次の間(復元)

※奥書院御座之御間(復元)


※御座之御間の天光室(復元)

※お茶所「間適軒」と休憩所(復元)


※表御殿と奥書院との間に位置する能舞台(移築復元)



藩主の憩いの場所

田中城御亭(おちん) 本丸から下屋敷へ(移築現存)静岡県藤枝市


会津若松城茶室「麟閣」の蒲鶴亭内(現存)宮城県会津若松市

彦根城二の丸御殿 御亭(おちん)

(移築後元の場所へ再移築)

 滋賀県彦根市


二本松城茶室「洗心亭」(現存) 福島県二本松市

高知城本丸御殿内 お茶所 (現存) 高知県高知市


新発田城清水園茶室「松月亭」

(現存) 新潟県新発田市

久留島陣屋茶室「栖鳳楼」 (現存) 大分県玖珠郡森町


彦根城二の丸御殿 能舞台(移築後元の場所へ再移築)

 滋賀県彦根市


彦根城槻御殿、彦根藩の下屋敷の奥書院部分で現楽々園  (現存) 滋賀県彦根市

 

彦根城槻御殿の茶座敷(楽々の間、地震の間、現存)    

 滋賀県彦根市