シンボルに見せるための手法いろいろ


お城の形の種類には3種類あります。建築の時代の新旧がわかったり、建築技術の向上がわかります。

入母屋望楼型-旧式(高層建築が難しい時代のもの)

・非定型な土地の形に合わせた建物の上に望楼を

 建築できる

・例:犬山、丸岡、彦根、松江、高知、

   掛川、大阪、岡山、熊本

 

 

層塔型-新式(石垣技術が発達して定型な土地を造れるようになった時代のもの)

・フロアの面積が一定の割合で上層階へ逓減する

 形

 ・例:弘前、白石、松本、姫路、備中松

   山、丸亀、松山、宇和島、松前、

   会津若松、名古屋、福山、島原

 

 

③南蛮型(唐造)-最上階が下の階より大きい(間に庇又は屋根がない)

 

 

・例:岩国、小倉、高松(復元はされて

      いません)

 



天守閣の構成には、主に4種類あります。

①独立式(天守閣単独で建っています)  

②複合式(天守閣に付け櫓が付随しています)  

③連結式(天守閣と複数の小天守や櫓が廊下のような渡櫓で連結しています)   

④連立式(天守閣と複数の小天守や櫓が多門櫓で環状に繋がっています)

①久留里城 模擬

 千葉県君津市

松前城、白石城、横手城、丸岡城、西尾城、大坂城、福山城、宇和島城、島原城

②今治城天守閣と多門櫓 模擬

 愛媛県今治市

小田原城、掛川城、浜松城、犬山城、彦根城、岸和田城、岡山城、松江城

③大洲城天守閣と高欄櫓(左)と

 台所櫓 天守復元、櫓現存

 愛媛県大洲市

弘前城(現状は独立)、松本城、名古屋城、越前大野城、広島城(現状は独立)、熊本城、中津城

④姫路城天守閣と西小天守、乾

 小天守、東小天守が渡櫓で繋

 がる  兵庫県姫路市

和歌山城、松山城、丸亀城(現状は独立)



天守閣の層数(屋根の数)と内部の階数は違う場合があります。主に天守閣層数は、二層、三層、四層、五層です。

かつては、六層や七層もあったとか。(安土城、福井城など)

階数は、入母屋望楼型天守閣は、複雑な階数になっている場合が多く、外から見える層の数と階数は不一致の場合が多いです。

(入母屋望楼型でも、広島城や彦根城は層数と階数は一致しています)

一方層塔型天守閣は、層の数と階数は一致します。

越前大野城天守閣(二層)復興

 福井県大野市

 

例:丸岡、備中松山など

 

 

 

高田城御三階(三層)復興

 新潟県高田市

 

例:松前、白石、白河小峰、

  新発田、高島、大多喜、

  小田原、掛川、岡崎、

  西尾、吉田、福知山、

  和歌山、杵築など

※御三階とは、天守閣代用の建物。

 江戸時代に入り天守閣を建てた

 いが幕府に遠慮して三階櫓を天

 守閣の代用としました。

 

大洲城天守閣(四層)復元

 愛媛県大洲市

 

例:大垣、模擬ですが郡上八

  幡など

熊本城天守閣(五層)復元

 熊本県熊本市

 

例:会津若松、名古屋、大坂、

  岡山、福山、広島、唐津、

  中津、島原など



外壁には、主に①「白漆喰塗込め」(海鼠壁含む)と②「下見板張り」の2種類と③その他があります。

 

①「白漆喰塗込め」は、壁を貝殻、海藻そして麻の繊維を混ぜ合わせて作った土(漆喰)を塗り込めた真っ白な壁です。姫路城は2016年に平成の大修理が終わり真っ白になりましたね。

その種類の中には、壁の下部に漆喰で瓦を繋ぎ合わせた「海鼠壁(なまこかべ)」というモノもあり、主に寒冷地の雪や霜対策で使用

されているお城の建物が多いです。

 

②「下見板張り」は、柿渋と煤から作った墨を板に塗り付けて壁に張り付けていたので意外と長持ちし、時代的にはこちらの方が古い壁

方式ですが、耐久性に富んでいたので江戸時代に入っても再築に使用していたお城もあったようです。

 

③その他、豊臣秀吉の大坂城天守閣の壁は「漆塗り」、徳川家光の江戸城寛永期天守閣の壁は「銅板張り」だったと言われています。更には、福山城天守閣の北面には、北からの大砲攻撃に備えるために「鉄板張り」が施されていて黒っぽく見えたそうです(古写真に残っています)。この天守閣は、太平洋戦争以前まで現存していました。

小田原城(白漆喰塗込め)三層四階、復興

 神奈川県小田原市

 

福知山城(下見板張り)三層、復興

 京都府福知山市

島原城(白漆喰海鼠壁)五層

 長崎県島原市



屋根の葺き方には、大きく分けて①瓦葺き、②石瓦葺き、③杮葺き(こけらぶき)、④鉛葺き、⑤その他があります。

①瓦葺きには、丸瓦、桟瓦(さんがわら)があり、使う場所で鯱や鬼瓦や鳥衾(とりぶすま)や滴水や軒瓦があります。

 

②石瓦葺きは、寒暖差の大きい地域では割れにくい石を使用することがありますが、重いので使用例は少ないです。

 

③杮葺きは、檜や杉から薄く加工した板を重ねたものです。天守閣への使用例は少ないです。高島城で採用されています。

 

④鉛葺きは、鉛を瓦に加工していて白っぽく見えて美しいです。天守閣に使用されている例は、徳川家康の江戸城や駿府城天守閣だそうですが、現存では金沢城三の丸菱櫓、金沢城復元五十間長屋や二の丸菱櫓、橋爪門続櫓などに見られます。

 

⑤その他、銅板張瓦葺は徳川家光の寛永期江戸城天守閣、徳川家康の江戸城最上階。瓦に金箔を張っていた言われているのが、豊臣秀吉大坂城天守閣などがあるそうです。

 

※鯱が3つある珍しい天守閣は新発田城御三階(復元)で、日本で唯一であったとのことです。

大多喜城(瓦葺き)復興

 千葉県夷隅郡大多喜町

新発田城(瓦葺き)復元

 新潟県新発田市

丁字型屋根に鯱が3つあげて

 いる珍しいお城(日本で唯一)

※海鼠壁

丸岡城(石瓦葺き)現存

 福井市坂井市

 

高島城(杮葺き)復元

 長野県諏訪市

金沢城三の丸菱櫓(鉛葺き) 現存  石川県金沢市

松前城(銅板葺き)復元

 北海道渡島管内松前町



天守閣などのお城の建物には、様々な装飾や建具が施されています。

①破風(はふ)は、屋根の装飾で「入母屋破風」「千鳥破風」「比翼千鳥破風」「向唐破風」「軒唐破風」「切妻破風」があり、天守閣

に威厳さや優美さを表現しました。しかし、天守閣から死角を造らないように或いは費用の節約の為に、破風が全くないシンプルな層塔式天守閣も現れました。

 

②懸魚(けぎょ)は、破風の内側に棟木や桁先を隠す為の飾り板で「梅鉢懸魚」「鏑(かぶら)懸魚」「三花鏑懸魚」「兎毛通し(うのげとおし)」等があります。

 

③窓は、古いお城はツッカエ棒で開閉する「付け上げ窓」、土壁に設けた「引き戸窓」、優美さを表現する「花(華)頭窓」等があります。

大坂城(一層目と三層目の入母屋破風)

復興

姫路城天守閣の破風いろいろ   現存

(二層目と五層目-軒唐破風、三層目-比翼千鳥破風、四層目-千鳥破風)

長浜城(二層目に向唐破風)模擬

会津若松城(一層目の切妻破風)復元

彦根城の懸魚

(千鳥破風の真ん中に梅鉢懸魚)

松本城の懸魚

(千鳥破風の真ん中に鏑懸魚)

姫路城小天守閣の懸魚

(千鳥破風の真ん中に三花鏑懸魚、軒唐破風には兎毛通し)

松本城天守閣の付け上げ窓    現存

姫路城天守閣の引き戸窓

松江城天守閣の花(華)頭窓